探究基礎講座とは

 高崎女子高等学校の総合的な探究の時間では、1年生の前半に「探究基礎講座」という独自の開発教材を使用したプログラムを実施します。今回は、その目的や概要を説明させて頂きます。

 

 探究活動では,日常生活や社会に目を向けた時に湧き上がってくる疑問や関心に基づいて,課題を見付け,情報を収集,分析して課題を解決していきます。

 しかし,ボーッと周りを見渡していても,違和感を感じませんし,疑問も湧いてきませんし,課題も見つかりません。また,世の中には情報がありふれすぎていて,何に目を付けて良いのか戸惑うほどに情報の収集や分析も困難です。

 さらに,世の中の諸問題は分野を超えて密接に絡み合っているので,最低限の基礎知識が無いと情報の収集や分析の難易度は上がってしまいます。例えば,環境問題に興味を持ったとしても,日本の経済状況,日本の歴史や伝統,宗教観などの最低限の知識が無ければ,表面的な調べ学習をして終わってしまう可能性があります。

 そこで,高崎女子高等学校では,日常生活や社会に目を向けるときの視点を,社会問題に関する基礎知識を扱いながら身につける「探究基礎講座」を実施しています。

 

探究基礎講座の中で重視しているのは次の視点です。

・時間軸(現在と過去を比べてみる。)

・空間軸(「他」と比べてみる。他県,他国…)

・立場軸(自分とは異なる立場になって考える。賛成意見,反対意見を比べてみる。)

・客観的な事実(データ,証言,証拠を提示する。)

・定量化(解決策の判断基準としての量的関係をおさえる。)

・マクロ視点(問題全体を俯瞰する。ミクロとマクロを往還する。)

・原点(自分自身,組織,国などの設立の理念・経緯,積み重ねてきた歴史・伝統から考える。)

 

以上の視点が確立されれば,身近なことやニュースなどから「気になること=違和感」を感じ取れるでしょう。そうなれば,もっと知りたい,解決したいと思えるのではないでしょうか。高女生には楽しみながら取り組んで欲しいと思っています。

 

≪参考≫同じ「情報」でも「インフォメーション」と「インテリジェンス」は違う!

 日本でも「インテリジェンス」という言葉が「情報」を意味する言葉としてようやく市民権を得るようになってきた。もう一つ同じ「情報」を意味する言葉として「インフォメーション」という言葉がある。この二つの言葉は,似ているようで全く意味が違う。

 「インフォメーション」とは,パッと目に入った資格情報や,人から聞いた伝聞情報など,五感で知覚できる情報である。一方,「情報」に加えて「知性」という意味もある「インテリジェンス」は,五感で得た情報に対して,さらに自らの知性を元にした検討や熟慮を加えた「分析情報」である。

 出典:丸谷元人(2023)『インテリジェンス大国への道』育鵬社

 

≪参考≫「探究基礎講座」と関連のある部分は下線を引いてあります。

〇探究における生徒の学習の姿(学習指導要領解説総合的な探究の時間編p12)

 生徒は,①日常生活や社会に目を向けた時に湧き上がってくる疑問や関心に基づいて,自ら課題を見付け,②そこにある具体的な問題について情報を収集し,③その情報を整理・分析したり,知識や技能に結び付けたり,考えを出し合ったりしながら問題の解決に取り組み,④明らかになった考えや意見などをまとめ・表現し,そこからまた新たな課題を見付け,更なる問題の解決を始めるといった学習活動を発展的に繰り返していく。要するに探究とは,物事の本質を自己との関わりで探り見極めようとする一連の知的営みのことである。

 

〇課題設定の視点(文部科学省 『今,求められる力を高める総合的な探究の時間の展開』p34)

 課題は現在の状況を他と比較することで設定することができる。例えば,現状を時間軸で分析すると,過去はどうだったのか,未来はどうあるべきなのかといった思考が促され,問いが生じる。また,現状を空間軸で分析すると,他の地域や国ではどうなのか,といった思考が促され,さらに,問いが生じる現状を立場軸で分析し,自分以外の専門家の方々や地域の大人,友達の考え等と比較したりすることも考えられる。

 教師は,このようにして生じた問いを,生徒たちが自覚化できるように顕在化させることが大切である。問いが顕在化されることにより,生徒は違和感(気になるな)や必要感(何とかしたいな),矛盾(解決したいな)などを抱くようになる。そこで設定される課題は,生徒にとって身に迫った,切実感のある課題になる。