総合的な探究の時間(思惟の時間)
探究のサイクルとは?
本日は「探究のサイクル」についてのお話をさせていただきます。「高校 探究」で検索をしていくと,下のような図が出てきます。
これは文部科学省が出している学習指導要領解説総合的な探究の時間編のp12にあるものです。高崎女子高等学校の探究活動は「社会(学問)を知る」活動と、「社会を変える」活動を行き来しながら進めていきます。よって,こちらの図ではそういった活動のイメージを共有することが難しい場面もあったため,新たに以下のような図を作成してイメージを共有しています。
こちらは,「社会(学問)を知る」サイクルと、「社会を変える」サイクルを分けて整理したものです。そして,「課題の設定」という部分を「問いの設定」という形に言葉を変えています。右の説明文には,高崎女子高等学校の生徒がどのように問いを立て続けて,「社会(学問)を知る」サイクルから「社会を変える」サイクルに移行していったのかを具体的な事例として紹介しています。
まず,自分の興味関心を時事問題などと結び付けながら,どんどん調べていきます。そうすることで,社会の「問題」が見つかってきます。さらに現地取材等も交えながら調べていくことで「問題の原因」が見つかってきます。こちらが「社会(学問)を知る」サイクルです。
問題の原因が見つかったら,問題を解消するための手段としての「課題」を設定して試行錯誤しながら社会を変えていきます。こちらが「社会を変える」サイクルです。このサイクルの中で,もっと知りたい,知るべきことが出てくるでしょう。そんなときは,「社会(学問)を知る」サイクルに戻ればよいのです。このように,2つのサイクルを自由に行き来しながら探究活動を進めて行きます。
ただ,探究のテーマによっては高校時代に課題を設定して試行錯誤をすることが困難なものもあるでしょう。例えば,新薬やミサイルを開発することは,高校生の知識や環境では難しいと思われます。その場合は,社会(学問)を知るサイクルにもどり,もっと突き詰めて調べていくことで,高校卒業後の学びと結びつけていけばよいでしょう。高校卒業後に大学や研究機関等の環境を活用しながら,課題の解決策を試行錯誤しながら社会に実装していくことを目指していきます。
いずれにしても,探究活動は高校時代のみで完結するものではありません。大学進学後,大学卒業後も続いていくものなのです。その一連の流れを生徒自身が明確にして,大学の志望理由として落とし込むことで,総合型選抜等の様々な受験機会の確保,一般入試(筆記試験)におけるモチベーションの向上,大学進学後の学びの質の向上に繋げられます。
≪参考≫
〇探究における生徒の学習の姿(学習指導要領解説総合的な探究の時間編p12)
生徒は,①日常生活や社会に目を向けた時に湧き上がってくる疑問や関心に基づいて,自ら課題を見付け,②そこにある具体的な問題について情報を収集し,③その情報を整理・分析したり,知識や技能に結び付けたり,考えを出し合ったりしながら問題の解決に取り組み,④明らかになった考えや意見などをまとめ・表現し,そこからまた新たな課題を見付け,更なる問題の解決を始めるといった学習活動を発展的に繰り返していく。要するに探究とは,物事の本質を自己との関わりで探り見極めようとする一連の知的営みのことである。
探究活動の基本~日常生活から「問いを立て続けて」みよう~
本日は探究活動の基本である、「問いを立てること」についてお話をさせていただきます。
高校生の皆さんからは、「探究のテーマを考えるのが難しい」、「将来やりたいこともよく分からない」といった話をよく聞きます。
そんなときには、日常生活から浮かんだ「素朴な疑問=問い」を立て続けていくことで、「探究していきたいこと」、さらには「将来やりたいこと」が見つかるかもしれません。
例えば、ご飯を食べる場面を想像してみて下さい。
ご飯を食べた後には,「ごちそうさまでした」と言います。
その「ごちそうさまでした」は誰に向けて言っていますか?
皆さんは誰のおかげで美味しいご飯をいただけているのでしょうか?
生徒の皆さんからは,次のような回答をもらいます。
①お父さん,お母さんがお金を稼いで食材をスーパーで買ってくれたから?
②運送業の人がスーパーに食材を届けてくれたから?
③農家の人がお米などを育ててくれたから?
④誰かが炊飯器などを開発してくれたから?
では,これらの回答からもっと問いを立て続けてみましょう。
①お父さん,お母さんがお金を稼いで食材をスーパーで買ってくれたから?
・お父さん,お母さんはどうやって「お金」を稼いでいる?
→そもそも「お金」とは何?どうやって作られた?
→世の中の「お金」の回り方はどうなっている?
→日本は「お金」が回らずに,「デフレ?」になっているらしい?
⇒日本の世帯収入はどんどん下がっている!
日本は内戦とかの無い国では「唯一?」経済成長が止まっている?
日本の世界におけるGDPシェアは20%から5%になっている!
→ここからどんな問題が起きているのだろう?
そもそも何でそんな状況になってしまったのだろう?
②運送業の人がスーパーに食材を届けてくれたから?
・誰がトラックを作っているのだろう?
→自動車の構造は?
→エンジンの仕組みは?
・そもそも道路は誰が作ったのだろう?
→道路の歴史はどうなっている?
・日本の都市部はいつも渋滞をしている気がする,他国はどうだろう?
→自動車の車速はニューヨークが平均32キロなのに,東京は19キロ!
⇒渋滞による経済損失が10兆円以上!
→渋滞量を減らし,日本経済を発展させるためにはどうすればよいのだろう?
③農家の人がお米などを育ててくれたから?
・私が食べている食材は誰が作っているのだろう?
→国産があまりない? 日本の食料自給率はどうなっているのだろう?
⇒カロリーベースで38%!!
→先進国だから,自分の国で作らずに買っているのだろうか?
→先進国の中でも圧倒的に低い! むしろ,「発展途上国」の自給率は低い!
→なぜ日本の食料自給率は低いのだろう?
→昔はどうだったのだろう?
⇒1960年頃からに急激に低下している!
→1960年頃に何があったのだろう?
・食材の肥料はどんなものがあるのだろう?
→肥料の三要素である窒素,リン,カリウムはどこで作っているのだろう?
・そもそもどのように食物は育っているのだろうか?「いただきます」とは?
→田んぼの水はどのように引いているのだろうか?
→日本の治水の歴史はどうなっているのだろうか?
→日本の食の歴史はどうなっているのだろうか?
④誰かが炊飯器などを開発してくれたから?
・炊飯器の仕組みはどうなっているのだろうか?
→ 電熱線? なぜ電気が熱に変換されるのだろうか?
・そもそも電気はどこから来ているのだろうか? 発電所?
・発電機の仕組みはどうなっているのだろうか?
→「電磁誘導」?
・日本のエネルギー自給率はどうなっているのだろうか? → 11%!
→どんな国から,どんな経路で輸入しているのだろうか?
→エネルギー自給率が低いとどんな問題があるのだろうか?
→エネルギー自給率を高めるためにはどんなことができるのだろうか?
このように,美味しいご飯をいただくことを考えるだけでも,そこには様々な人の「頑張り」があると同時に,多くの「問題」があることに気が付くでしょう。そして,それらはお互いに密接に関連しているのです。よって,1つの分野にとらわれず幅広い視点を持って,どんどん問い続けることで,本当に解決したいことやその解決策が見えてくると思います。最初は「問い=素朴な疑問」から始まったものが、段々と「問い=課題の解決策」に変わってくるわけです。そして,それが「将来のやりたいこと=進路選択」に繋がってくるでしょう。
探究基礎講座とは
高崎女子高等学校の総合的な探究の時間では、1年生の前半に「探究基礎講座」という独自の開発教材を使用したプログラムを実施します。今回は、その目的や概要を説明させて頂きます。
探究活動では,日常生活や社会に目を向けた時に湧き上がってくる疑問や関心に基づいて,課題を見付け,情報を収集,分析して課題を解決していきます。
しかし,ボーッと周りを見渡していても,違和感を感じませんし,疑問も湧いてきませんし,課題も見つかりません。また,世の中には情報がありふれすぎていて,何に目を付けて良いのか戸惑うほどに情報の収集や分析も困難です。
さらに,世の中の諸問題は分野を超えて密接に絡み合っているので,最低限の基礎知識が無いと情報の収集や分析の難易度は上がってしまいます。例えば,環境問題に興味を持ったとしても,日本の経済状況,日本の歴史や伝統,宗教観などの最低限の知識が無ければ,表面的な調べ学習をして終わってしまう可能性があります。
そこで,高崎女子高等学校では,日常生活や社会に目を向けるときの視点を,社会問題に関する基礎知識を扱いながら身につける「探究基礎講座」を実施しています。
探究基礎講座の中で重視しているのは次の視点です。
・時間軸(現在と過去を比べてみる。)
・空間軸(「他」と比べてみる。他県,他国…)
・立場軸(自分とは異なる立場になって考える。賛成意見,反対意見を比べてみる。)
・客観的な事実(データ,証言,証拠を提示する。)
・定量化(解決策の判断基準としての量的関係をおさえる。)
・マクロ視点(問題全体を俯瞰する。ミクロとマクロを往還する。)
・原点(自分自身,組織,国などの設立の理念・経緯,積み重ねてきた歴史・伝統から考える。)
以上の視点が確立されれば,身近なことやニュースなどから「気になること=違和感」を感じ取れるでしょう。そうなれば,もっと知りたい,解決したいと思えるのではないでしょうか。高女生には楽しみながら取り組んで欲しいと思っています。
≪参考≫同じ「情報」でも「インフォメーション」と「インテリジェンス」は違う!
日本でも「インテリジェンス」という言葉が「情報」を意味する言葉としてようやく市民権を得るようになってきた。もう一つ同じ「情報」を意味する言葉として「インフォメーション」という言葉がある。この二つの言葉は,似ているようで全く意味が違う。
「インフォメーション」とは,パッと目に入った資格情報や,人から聞いた伝聞情報など,五感で知覚できる情報である。一方,「情報」に加えて「知性」という意味もある「インテリジェンス」は,五感で得た情報に対して,さらに自らの知性を元にした検討や熟慮を加えた「分析情報」である。
出典:丸谷元人(2023)『インテリジェンス大国への道』育鵬社
≪参考≫「探究基礎講座」と関連のある部分は下線を引いてあります。
〇探究における生徒の学習の姿(学習指導要領解説総合的な探究の時間編p12)
生徒は,①日常生活や社会に目を向けた時に湧き上がってくる疑問や関心に基づいて,自ら課題を見付け,②そこにある具体的な問題について情報を収集し,③その情報を整理・分析したり,知識や技能に結び付けたり,考えを出し合ったりしながら問題の解決に取り組み,④明らかになった考えや意見などをまとめ・表現し,そこからまた新たな課題を見付け,更なる問題の解決を始めるといった学習活動を発展的に繰り返していく。要するに探究とは,物事の本質を自己との関わりで探り見極めようとする一連の知的営みのことである。
〇課題設定の視点(文部科学省 『今,求められる力を高める総合的な探究の時間の展開』p34)
課題は現在の状況を他と比較することで設定することができる。例えば,現状を時間軸で分析すると,過去はどうだったのか,未来はどうあるべきなのかといった思考が促され,問いが生じる。また,現状を空間軸で分析すると,他の地域や国ではどうなのか,といった思考が促され,さらに,問いが生じる現状を立場軸で分析し,自分以外の専門家の方々や地域の大人,友達の考え等と比較したりすることも考えられる。
教師は,このようにして生じた問いを,生徒たちが自覚化できるように顕在化させることが大切である。問いが顕在化されることにより,生徒は違和感(気になるな)や必要感(何とかしたいな),矛盾(解決したいな)などを抱くようになる。そこで設定される課題は,生徒にとって身に迫った,切実感のある課題になる。
探究活動とは
学校教育の目的は,「人格の完成を目指し,平和で民主的な国家及び社会の形成者たる国民を育成する」ことです。また,総合的な探究の時間の目標は,「各教科等における見方・考え方を総合的に活用して,自己の在り方生き方を考えながら,よりよく課題を発見し解決していくための資質・能力を育成する」ことです。
これらの目的,目標を踏まえると,高校の探究活動は「どんな大人になりたいか?どんな国家・社会にしていきたいか?そのために何が出来るのか?を考えて行動していく活動」と言えます。もっとわかりやすく言えば,「興味関心を突き詰め『よい世の中』の作り方を考えて行動していく活動」と言えます。
しかし,「どんな大人になりたい?」,「どんな国家・社会にしていきたい?」,「よい世の中って?」と聞かれてもなかなか答えられない人が多いと思います。そんなときには,「これまでに積み重ねてきた歴史・原点を踏まえること」と,「社会との接点を持つこと」を意識してみて下さい。
私達は当たり前のように「文化的な」生活ができていますが,それは自然の恵みや先人達の遺産があるからです。まず,私達の食べ物のうち水と塩以外はほとんど全て「命」です。また,先人達が多大な犠牲を払いながら河川を整備して水田を作り(日本の堤防の9割以上は江戸時代までに作られたものです!),交通網を整備することで人,モノ,情報の速やかな移動手段を確保し,生物が光合成をして蓄えたエネルギーを熱や電気エネルギーに変換する仕組みを作るなどして,「文化的な」生活の礎を築いてきました。
そして,東日本大震災のような大災害の中でも略奪・暴動を起こさず,お互いに協力して困難を乗り切れる「和の心」を2680年以上の歴史(さらにいえば縄文時代から…)によって育んできました。
このように,これまでに先人達が積み重ねてきた歴史・原点を継承しつつ,皆さん自身の歴史・原点をじっくりと探ることで,「どんな大人になりたいのか?どんな国家・社会にして後人に残していきたいのか?」が見えてくると思います。また,現在進行形で「国家・社会作りに直接関わっている方々との接点」を持つことで,それはより具体化してくるでしょう。
よって,高崎女子高等学校の探究活動では,学校から飛び出し,「国家・社会作りに直接関わっている方々との接点」を持つことを推奨しているのです。
≪参考≫特に探究活動と関連のあるところには、下線を引きました。
〇教育の目的(教育基本法)
教育は,人格の完成を目指し,平和で民主的な国家及び社会の形成者として必要な資質を備えた心身ともに健康な国民の育成を期して行われなければならない。
〇教育の目標(教育基本法)
一. 幅広い知識と教養を身に付け,真理を求める態度を養い,豊かな情操と道徳心を培うとともに,健やかな身体を養うこと。
二. 個人の価値を尊重して,その能力を伸ばし,創造性を培い,自主及び自律の精神を養うとともに,職業及び生活との関連を重視し,勤労を重んずる態度を養うこと。
三. 正義と責任,男女の平等,自他の敬愛と協力を重んずるとともに,公共の精神に基づき,主体的に社会の形成に参画し,その発展に寄与する態度を養うこと。
四. 生命を尊び,自然を大切にし,環境の保全に寄与する態度を養うこと。
五. 伝統と文化を尊重し,それらをはぐくんできた我が国と郷土を愛するとともに,他国を尊重し,国際社会の平和と発展に寄与する態度を養うこと。
〇総合的な探究の時間の目標(学習指導要領解説 総合的な探究の時間編p11)
探究の見方・考え方を働かせ,横断的・総合的な学習を行うことを通して,自己の在り方生き方を考えながら,よりよく課題を発見し解決していくための資質・能力を育成すること
探究活動の基本的な流れ
【興味関心探し】
- 自分自身の興味関心を探っていこう。
- 自分自身の在りたい姿、「我々(=社会)の在りたい姿(=目指すべき未来)」を思い描こう。
【問題の発見】
- 現状から予想される成り行きの未来と、目指すべき未来の「ギャップ=問題」を見つけよう。
【問題の原因】
- 問題の原因を探究しよう。⇒最前線・最先端の現場・研究機関へ取材に行こう!
【課題の設定】
- 問題を解消するための手段として「課題」を設定しよう。
【解決策の創造】
- 課題の解決策を「創造」しよう。
【解決策の試行】⇒【解決策の実装】
- 解決策を実際に試行し、現場や専門家のフィードバックを受けながら試行錯誤を繰り返して「社会実装=(社会を変えること)」を目指そう。
解決策が上手くいかない場合は、別の解決策に切り替えていくこともあります。そして、一つの課題が解決した後は、別の課題を設定し、在るべき姿の実現を目指していきます。さらには,途中で目指すべき未来が変わることもあるでしょう。もちろん、高校時代に全ての問題が解消するはずもありません。在るべき姿を目指す探究活動を推進するために必要な要素をしっかりと考え、大学での学び、起業・就職へと繋げていきましょう。
先輩の「問い」の流れ
【興味関心等のキーワード】
子どもの主体性,不登校,教員養成,海外の教育制度
→自己肯定感が大事らしい?
日本人の子どもの自己肯定感はどうなっているのか?
自己肯定感と学習意欲等にはどんな関係があるのか?
一人ひとりの魅力・能力を引き出せる教育環境の整備をするためには?
【問題の発見】子どもの自己肯定感の低下により様々な弊害が生じている。
→子どもの自己肯定感と年齢にはどんな傾向があるのか?
自己肯定感を高めるためにはどんな教育があるのか?
群馬の学校教育で実施できているのか?
群馬の教師の研修の機会を充実させるためにはどうすれば良いのか?
⇒現地取材(モンテッソーリ教育幼稚園,不登校支援団体等)
【問題の原因】①異年齢集団と遊べる機会,体験活動が少なくなっている。
②全員一律の教育システムに限界が生じている。
→①、②のどちらの原因から解消すべきか?
教育システムを変えることは難しい?どちらが面白そう?
⇒課題の設定の段階へ!
【課題の設定】高崎で異年齢集団と体験活動ができる機会を増やすためには?
→群馬の公教育で制度設計をするのは難しい。
⇒じゃあ自分でやって先行事例にしちゃおう!
【解決策の創造】高校生有志が近所の小学生を集めて体験学習会を開催する。
→どんな体験活動を行えば良いのか?
→小学生に周知するためには?広報は利用できる?
⇒現地取材(高崎市広報課,高崎市教育委員会,高崎市の小学校)
→開催場所や保険はどうしよう?
⇒現地取材・相談(NPO事業者,保険会社,公民館)
→持続可能なものにするためには?費用は?人員は?
→運営協力者にとってのメリットを確保するためには?
→教育的効果を実証するためには?
【解決策の試行】体験学習会を実施してフィードバックを得る。
→フィードバックを踏まえ,教育的効果を検証する。
→教育的効果が実証されたが,まだ課題が多いので,試行を続ける。
→得られたフィードバックや収集したデータをまとめたことで,協力者も増えた。
→取り組みを持続可能なものとして,社会に「実装」できた。
【解決策の実装】
≪参考≫
課題設定の視点(文部科学省 『今,求められる力を高める総合的な探究の時間の展開』p34)
総合的な探究の時間においては,生徒が自ら課題を見付け,自ら学び,自ら考え,主体的に判断するなど,生徒の主体性や興味・関心を十分に生かすことが望まれる。生徒の主体性や興味・関心を十分に生かすとは,課題の設定を生徒に任せきりすることではないことに留意が必要である。
生徒は,潜在的に自分の将来に対しての夢や不安を抱き,将来を展望している。課題を設定する上では,現実の状況と理想の姿との対比などから問題を見いだし,課題意識を高めることが大切となる。
理想の姿を思い描くことによって,現実の状況との「ずれ」や「隔たり」が明確になり,その問題状況を改善するために課題を設定することになる。理想の姿を明確にできなければ,問題状況や課題を明確にすることもできない。生徒が理想の姿を明確にもち,問題状況を把握し,適切に課題を設定できるようにする教師の役割が重要となる。
https://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/sougou/20230522-mxt_kyouiku_soutantebiki02_1.pdf
- 1年生の前半では,高崎女子高等学校の独自の開発教材を使用して探究基礎講座という独自のプログラムを行います。目的は,「情報分析力」を身につけることと,探究活動を行うための「最低限の知識」を身につけることです。また,第一線で活躍する専門家のワークショップと連動しています。(詳細は別の記事で説明します)それと並行して,ロングホームルームの進路の時間を利用して,夢ナビ等も活用した学問調べ,大学訪問等も進めていくことで,興味関心のある学問分野も探していきます。
- 1年生の後半では,それまでに蓄積されてきた知識や経験を踏まえて自分の探究テーマを設定していきます。生徒一人一人が,最先端・最前線の現場への取材を通じて,真の社会問題とその原因を探っていきます。原因を分析できたら,問題を解消するための「課題」を設定し,社会と連携しながらその解決策を考えていきます。
- 2年生では,生徒自身が考えた「解決策」を試行していきます。外部からのフィードバック、実験データ等をもとに効果を検証し試行レベルを徐々に高めていきます。最終的には,「解決策」を用いてよい社会に変えること(これを社会実装といいます)を目指します。卒業生メンター,在校生メンターからのフィードバックも複数回取り入れることで,支援体制も充実させてあります。
- 3年生では,探究活動と大学進学後の学びを接続させていきます。目指すべき未来に向けて出来たこと,出来なかったことは何か,出来なかったことを実現するためには,卒業後にどんな学びをすれば良いのだろうか,を考えていきます。これらが明確になることで,大学進学後の学びの質を大きく高めることができます。「そもそも希望する大学に進学できなきゃ始まらないでしょ」と思う人もいるでしょうが,その確率も高めることができます。具体的には,総合型選抜を始めとした様々な大学入試に挑戦できるということと,従来の一般入試(筆記試験)における教科学習のモチベーションも向上させることが出来るということです。