探究通信

7月29日(月)探究サミットIN高女 開催決定! 参加者募集!

意欲のある他校の生徒と交流をして,探究活動のヒントを得たり,フィールドを広げませんか?

 

探究活動に真剣に取り組めば取り組むほど,自分の学校や地域だけでは必要な情報やデータ,ノウハウ,人脈を得ることが難しかったりするという声をよく聞きます。そこで,探究活動に意欲のある生徒同士の「人脈」を作り,現在取り組んでいる探究活動をより充実させることをねらいとして、高校生どうしが交流できる機会を設けました。生徒のみの参加も可能です。

 

次のような人におすすめです。

1 探究活動の気合いを入れたい!仲間を見つけたい!

探究活動に意欲的に取り組んでいる他校の生徒との交流から刺激を受け,探究意欲を高められます。貴重な協力者を見つけたりすることもできるでしょう。

2 探究活動のヒントを得たい!

探究活動の困りごとや悩みを共有したり,他校の実施状況を知ったり,他校の生徒からアドバイスをもらったりして,今後の探究活動のヒントを得られます。

3 探究活動のフィールドを広げたい!

他校の生徒と繋がりを作ることで,探究活動のフィールドをさらに広げられます。

※上記のような項目に少しでも該当するような生徒の皆さんのご参加をお待ちしております。

 

以下にチラシの画像を載せておきます。(PDF版⇒高校生探究サミットin高女チラシ.pdf

 

申し込みはこちら 7月17日(水)締め切り https://docs.google.com/forms/d/e/1FAIpQLScmj6dQd6eH1Rnzcc6Dtn0bTauzMBC9ppB_SNp4fcxFfAQdoA/viewform

1年生発展探究始動

 6月5日(水)より,1年生の希望者向けの「発展探究」が始まりました。「発展探究」とは,水曜の6限に実施している総合的な探究の時間(思惟の時間)の続きとして7限に開講された授業です。6月中は,6限は「発展探究」の受講の有無に関わらず1年生全員が同じプログラムを行い,7限に「発展探究」独自のプログラムを行います。7月からは「発展探究」の受講者は,6限,7限と一貫して独自の発展的なプログラムを実施します。

 「発展探究」を受講していない生徒のプログラムとの大きな違いは,異学年(2年生,3年生,卒業生)の交流の機会が多いこと,探究基礎講座の発展的な内容を扱うこと,探究活動をブラッシュアップさせるための相互フィードバックの機会が多いことなどがあります。

 この日は、今後のスケジュール説明,質疑応答に続いて,心理的安全性を高める人間関係作りワークを行いました。興味関心を突き詰め,社会問題について主体的に考え,多角的に分析し,行動していく中で,豊かな社会,国家を築き上げる「本物の」リーダーになりましょう!

 

Aタイムを利用した探究活動打ち合わせ

6月5日(水)の3限は,Aタイム(生徒がそのときに必要な学びを主体的に選びとる時間)でした。今回はAタイムを使い,探究活動の打ち合わせをしていた場面を紹介します。

 

 以前の記事で,3年生の生徒の事例紹介として「高女教室」というものを取り上げましたが,本日はその運営打ち合わせを行っていました。高女教室とは,子供たちの自己肯定感(ありのままの自分を受け入れ,前向きな気持ちで物事に取り組める気持ち)を高めるために,異年齢集団による体験学習プロジェクトとして立ち上げたものです。第1回は少人数で実施し大好評でしたが(詳細は⇒こちら),第2回は規模を拡大して8月に実施予定です。しかし,3年生1人だけでの運営を続けると,規模の拡大には限界があり,また有意義なプロジェクトを立ち上げたとしても,卒業と同時に立ち消えてしまいます。そこで,後輩に運営スタッフとしての参加を呼び掛けたところ,1,2年生の有志が集まりました。

 3年生にとっては運営メンバーを集めることで,プロジェクトの規模の拡大,持続性の向上に繋がりますし,後輩にとっては先輩の理念やノウハウを引き継げるメリットがあります。また,「教育」に携わる探究活動をする生徒にとっては、自身の教育プログラムを試したりするなど,多くの可能性を秘めた「場」とも言えます。

 このように,先輩が立ち上げたプロジェクトを後輩たちが引き継ぎながら,その理念やノウハウを継承し,自分自身の探究活動をより発展させていって欲しいと思います。

1年生 丸谷元人先生 探究講演会実施

5月31日(金)の1年生の総合的な探究の時間の様子をお伝えします。
本日は1年生で実施している探究基礎講座の一環として,外部の専門家を招いての探究講演会を実施しました。
(「探究基礎講座」の概要はこちら ⇒ 探究基礎講座概要)

講師は「危機管理コンサルタント」の丸谷元人先生です。

 丸谷先生は南太平洋、中東およびアフリカの危険地帯での治安・テロ対策、誘拐事案対応、地元政府および部族との交渉、大手グローバル企業におけるセキュリティ体制構築やリスク・危機管理部門を担当した経験から、世界情勢を実体験に基づいたミクロな視点とマクロな視点を往還させながら多角的に分析されている方です。
 総合的な探究の時間とは,「興味関心を突き詰め『よい世の中』の作り方を考えて行動していく」高校教育の中核をなす科目です。(詳しくはこちら⇒探究活動とは)そんな生徒達の探究活動は「情報の収集・分析」から始まるのですが,丸谷先生は「情報の収集・分析」の失敗が「死」に繋がる現場をくぐり抜けてきた方であり,まさに「情報の収集・分析」の第一人者と言える方です。 

講演テーマは
「ウクライナ/ガザ戦争から見るプロパガンダ報道」
 - ウクライナ戦争における報道はどれだけ正しかったのか?
 - イスラエルとハマスの戦いにおける報道との差は?
 - 過去の国際報道における大手マスコミの誤情報
になります。

豊富な現場経験,数多くの専門知識に裏付けされたお話は,まさに「新聞やテレビからは100年かけても得られない」ものでした。
60分の講演の後は,20分間の質問時間がありましたが,質問が途絶えることはありませんでした。講演会終了後,放課後に実施された大会議室での追加質問会では40名程度の生徒が参加し,熱のこもったやり取りがなされました。講演会,追加質問会の熱気は,過去に見られなかったものであり,まさに「本物」に触れることで,生徒の「魂」が強く揺さぶられるものでした。

≪講演の要点≫
 私達が普段目にする情報の中には,特定の意図を持つものがあり,知らず知らずのうちに「思考を支配」されてしまうことがある。その流れは,
・恐怖を与える。
・対立させる。(分断統治)
・自由を制限する。
・自分がやっていることを正しいと信じ込ませる。
・思考を支配する。
というものである。

特に,以下の項目に該当するものは代表的なプロパガンダの手法である。
・レッテル貼り ⇒○○系の人
・断言 
・情報操作 ⇒都合のよいことを強調,反対の主張は隠蔽や捏造
・集団心理 ⇒周りはみんなやっている
・一般化
・証言の利用
・敵の創出
・ステレオタイプ
・身分や権威の利用
・美辞麗句の利用
・究極の選択

 

こういったプロパガンダに簡単に乗せられないためには,
・お金の流れを追う。
・誰が得をしているのかを考える。
・愛と憎しみ,善悪二元論を持ち込まない。
・感情に流されない。
・考えることに楽をしない。
・自分で現場にいってみる。
・出来る限りの情報を多角的に集める。
ことが大切である。

 生徒が「よい世の中」の作り方を考えて行動していく探究活動で情報収集・分析を行う際に,これらの意識がないと,プロパガンダに乗せられた「プロパガンダ探究」を進めてしまうことになるかもしれません。多くの高校生が「プロパガンダ探究」を進めてしまった先には、どんな未来があるのでしょうか。高女の皆さんには,真実を見抜き,本物の社会問題を解決し,豊かな世の中を築いていってほしいと願っています。丸谷先生,誠にありがとうございました。

 以下に生徒の振り返りを載せておきます。300名の生徒一人一人がワークシートにもの凄い書き込みをしていました。全体の記述レベルが非常に高いなと感じました。

 

≪今後の探究活動で生かせそうなこと≫
・情報を収集するときは,ネットなどで調べることよりも,自分で現地や現場に行くことの方が大切であるということ。情報を収集するときは,どの情報に対しても安易に飛びついたり,信じ込んだりしないこと,感情的にならないこと。多面的に物事を見る(与えられた視点だけでなく見るのではなく,自ら視点を変えてみる)
・何を信じていい情報かを判断することに生かせそうだと思った。この情報で誰が得をするかを考えて,この情報はフェイクかもしれないし,ほんの一部分かもしれないと色々なことを考えるのが大事だと思った。
・ネットの情報やテレビ,新聞の情報をうのみにせず,自分なりの観点から物事を判断し,データを集めること。また,様々なところからデータを集め,その中の信憑性を高めること。
・物事を一つの考えだけで終わらせようとせずに,これには何かまだあるんじゃないかと考えを膨らませてどんどん探究活動を広げられるのではないかと考えた。その中で調べ物をするときに,フェイクニュースに騙されないよう,すぐに見たものを信じるのではなく,いくつかのサイトを見て判断したいとおもった。

 

≪授業の前後での視点(ものの見方)の変化≫
・授業の前は,情報番組や新聞などに載っていることは,全て正しいものだと信じ切って毎日見ていたのですが,自分が現地に行ったことのない限り,本当のことだという確信はないため,信じ切らず,自分でも考えてみようと思いました。ただ単に考えるのではなく,「自分の思考は都合の良い方に寄っていないか」,「感情的になっていないか」,「思考において楽をしようとしていないか」などを考慮して考えていきたいと思った。
・テレビや新聞に載っていることは,全て本当のことだと信じていたので,今回の講演を聴き,本当に本当のことはごく一部しかなく,その正しいとされる情報もなかなか公になることがないということから,全てを信じず,自分なりの観点から,これは本当の情報であると判断したいと思うようになりました。
・海外のニュースの情報が100だとしたら,日本のニュースの情報が3しか無いと聞いて衝撃だった。本当に少ない一部の切り取られた情報を見て,私達は信じ込んでいて世の中を知った気になっていることにゾッとした。表面的な情報だけを見ているのだという気持ちを持ちたいと思った。
・今までは,マスメディアが本当のことを伝えていないと言うことも分かっていたが,それ以上の情報を集めようとしていなかったが,今回の授業を通して,情報を自分から入手しようと思えたことや,映像にフェイクニュースが使われていることから,映像の細部まで確認していきたい。

 

≪授業の率直な感想,講師の方へのメッセージ≫
・私は今までテレビからの情報をそのまま受け取るだけだったのですが,講演で現実の戦争を知ったとき,自分の想像と現実との大きなギャップがあることを感じ,とても驚きました。また,「思考するときに楽をしない」という言葉を聞いて,これからはより真実に近い情報を知ることができるように,正しい判断,多面的な視点,推察を心掛けていきたいと思いました。私は今回の講演を通して,まずは自分で考えること,その次に現地に行ったり,色々な視点から考えたりすることなどの大切さを学び,実際に行ってみようと思いました。自分の普段の考えかたを改めるきっかけをくださり,ありがとうございました。
・今まで受けた学校の講演会で一番興味深く面白い講演だった。特に印象に残っている言葉は,丸谷先生が,「今私が言っていることも信じちゃだめですよ」とおっしゃっておられたことだ。その後の座談会では,質問する機会があり,その中でも様々な例を入れながら説明して下さり,自分が知らなかった世界へと少し足を踏み出せた気がした。
・これからの日本や世界が心配になった。フェイクニュースばかりあふれていて,マスメディアは権力者の支配下に置かれており,本当のことを発信しようとしている人を殺したりして,私達は気付かないうちに考えを誘導されていて怖いと思った。それに,今の日本は平和だから世界の戦争も他人事で,いつか自分たちも同じようになっていくかもしれないという危機感や,世界を知らなきゃならないという気持ちが全くないと思った。命をかけて発信した人の情報さえも全く報道されて報道されていないのにとても腹が立った。丸谷さんも命の危険がありながらも日々戦っていて,本当に尊敬するし,感謝したいと思った。私はそういう人がいることを頭に置きながら,情報に踊らされずに自分で考えることのできる人になりたいです。

また,丸谷先生の「X」にも生徒のやり取り等が掲載されていますので,そちらもぜひご参照ください。
https://x.com/h_marutani/status/1797664290167771648

1年生 探究基礎講座第3回(総合的な探究の時間)

5月15日(水)の1年生の総合的な探究の時間の様子をお伝えします。

(「探究基礎講座」の概要はこちら ⇒ 探究基礎講座概要)

今回の目的は「日本の現状をマクロな視点で把握し、身近な生活と結び付け、成り行きの未来を予測する
」きっかけをつかむことです。

テーマは以下のようになります。

 

1 過去50年のGDP推移についてから読み取れることをまとめる。

出典:National Accounts - Analysis of Main Aggregates (AMA)より作成


〇日本だけ成長していない!
⇒この30年間で,内戦等が無い国では日本だけが経済成長できておらず,

    GDP世界シェアは20%から5%にまで落ち込んでいる!
⇒一人当たりのGDPは,G7(主要7か国)首位から最下位になっている!

 

2 過去30年の世帯平均収入の推移から読み取れることまとめ,その理由を考える。

出典:令和3年国民生活基礎調査より作成

≪生徒の問いの展開例≫
〇手取り収入が550万⇒417万! しかも,消費税3%⇒10%! 物価・光熱費も高騰!
〇円換算で1997年4月を境に経済成長が止まり,庶民の収入が減っている理由はどこにある?
・工業型社会から情報化社会に変わったから? 
 →1997年に急に変わった?日本だけ対応できない?
・日本型経営の効率が悪いから? 
 →1997年まではトップだったものが,急に通用しなくなる?
・日本の教育水準が低いから?  
 →1997年を境に急に低くなる?現在のレベルは?
・国際金融危機があったから?  
 →日本以外の国はあまり影響を受けずに成長しているが?
・イノベーションリーダーがいないから? 
 →日本以外の世界中の国にいるわけではないが?
・他には何があった?

 

3 1,2から分かったことを身近な出来事や時事問題と結び付ける。

≪生徒の問いの展開例≫
〇GDPシェアが20%から5%になっているということは?
 →日本と諸外国との国際関係にどんな影響を与える?
 →それが国民の生活にどんな影響を与える?
〇一人当たりのGDPがG7首位から最下位になっているということは給料も安い?物価は?
〇日本のGDPはあまり変わっていないのに庶民の収入が大きく減っている?
 →一部の人にお金が集中している?
 →貧困率はどうなっている?
 →もしそうだとしたら,どんな影響が出てくる?
〇スマホは値上がりしている?
 →給料も「値上がり」していれば問題ない? 海外は?

〇海外旅行に行く人は1997年頃からは増えてはいないけど,日本に観光に来る人は増えている?
〇日本が相対的に安くなっているということは?
・企業も買われている?
 →企業が買収されるとどんな影響がある?
・他には何が買われている? 土地?,人?…


4 このままでは日本はどんな国になるのかを予測する。

≪生徒の問いの展開例≫
・少子化,貧困化,資本や土地の買収が進む先に待っているものは?
・ブラック企業の増加?生活環境の悪化?いじめ・非行の増加?犯罪の増加?文化・伝統の衰退?
・「植民地」になってしまう?もうなっている?

 

5 より良い日本にするために,些細なことでも自分たちに何かできることはないかを考える。

≪生徒のアイデア例≫以下のような内容が多く見られた。
・たくさん本を読む。勉強を頑張る。
 →技術力の向上→新製品の開発
 →政治や経済についても詳しくなる。
・政治や社会問題についてしっかり調べて選挙に行く。
・国産製品の消費,需要を増やす。
・地産地消を推進する。
・税金の使い方を見直す。
・教育水準を高める。
・日本の「文化」を意識して生活する。
・政治家になる。
・広い視野で外国のことについても知る。
・自分の頭で考える。(周りに流されない)

 

≪本日の振り返り≫感想,本日のテーマについてしっかりと考えていくために必要なこと

・なぜ政府は外国に支配されてゆく現状を変えていくことができないのか、法律を変えられないのか、疑問に残るものが多かった。自分も知らない日本の現状を知って驚きが多かった。他の人も知らないはずだから、他の人にも知ってもらいたいと思った。
・本を読む。特に普段読まない政治や経済についての本を読んでみる。疑問に思ったことがあったら積極的にインタビューする日常生活でも意識を高く持って日本製のものを買う。外国人に買収された企業はどこか調べてみる。
・日本の未来についてあまり考えたことがなかったけど、ここまで考えられてよかった。日本の未来が明るいとは決して言えないけど、その未来を変えるために少しでも出来ることがあればやりたいと思った。日本の経済について、あまり興味を持ったことがなかったけど、外国との差を見て、もっと経済について知ろうと思った。
・マクロな視点で始まった「日本は経済成長していない」というテーマでも、ミクロな視点で考えると様々な原因があった。興味が無い人に興味を持たせる、知ってもらうことは本当に難しいが、一番必要で効果的だと思った。日本はまだ好きなので、日本を少しでも良い国にしたい。
・大きな問題は一見私達にはどうすることも出来ないように思えるが、分析してかみ砕いていくうちに、自分たちにできることを見つけられる。現状について知り、危機感を持つことが大切だと思った。
・どのような理由が絡んでいるのか遡って考えると知らなかったことを知れて納得できて面白い。調べることにもきりが無いと思った。歴史も法律も地理もいろいろやるべき!
・日本には想像以上に深刻な課題がたくさんあることが分かって、自分たちも日本の未来に向けて行動しなければならないと思った。日本の課題についてしっかり考えるためには、ニュースを見たり、きちんと勉強をしたりする(基礎的な知識をつける)ことや積極的に地域活動などに取り組んで、考え方や視野の幅を広げることが必要だと考えた。
・日本がこれからも日本であり続けるためには、私達も今できることを考えていかなければならないと感じた。もっと日本と世界の状況について知識をつけたいと思った。
・私達は日本を変えていかないといけないと思った!!今日の授業がないとそんな大変なことに気付かなかったので、もっと調べてみんなが知るべきだと思った。どうすれば日本が経済発展できるのか知りたい。
・GDPや収入などの大きな問題も自分には関係ないと思わず、どうしたらよりよい社会になるのかを1人1人が自分のことだと思って考えるのが大切だと思いました。
・このままだと、日本と外国との差が広がってしまい、日本で生きられなくなってしまうと思うので、まずは日本の現状を日本国民全員が知り、みんなで解決できるように努力する。自分から行動する。日本には伝統や文化などたくさんの魅力があるということを外国に伝えることが必要だと思う。みんながこの問題に関心を持つことが大事だと思う。

 

1年生 探究基礎講座第2回(総合的な探究の時間)

5月8日(水)の1年生の総合的な探究の時間の様子をお伝えします。 

当日は先週に引き続き探究基礎講座が実施されました。

(「探究基礎講座」の概要はこちら ⇒ 探究基礎講座概要)

目的は、社会問題の「原因を探れるようになる」きっかけをつかむことです。

「原因」を正しく探らなくては、解決策を考えることは難しいものです。

先週と同様に個人が考えたり・調べたりしたことを、班で共有しながら視点をひろげる活動を軸に展開されました。

 

当日に扱ったテーマは以下のようになります。

1 日本の食糧自給率について (出典:農林水産省HP)

①     食糧自給率が低いことはなぜ問題なのだろうか。

②     日本の食糧自給率が低い理由を調べるためには,どんなデータや事実が必要なのか。

③     グラフにある国以外で,食糧自給率が低い国はどんな国があるのだろうか。なぜ低いのか。

 ※前回の時間軸、時間軸、立場軸という視点に「マクロ視点」を付け加えて、仮説を立てながら考える。

≪生徒の問いの展開例≫

 ①食糧自給率が低い問題点は?
 ・もし災害や戦争・紛争があっても,食料や種・飼料を回してもらえる?
 ・外国人は日本人に対して,食品の品質について責任を持つと思う?
  ⇒つまり・・・安心安全な食品を食べられる?

 

②なぜ日本の食糧自給率は低い?
 ・時間軸で見ると戦後に急激に下がっている!?
 → なぜ戦後に急激に下がったのか?

 → 1950~60年代に何があったのか?
 → 食の好み(習慣)が変わった? 
 → なぜ食の好み(習慣)が変わったのか?
   例えば…なぜ日本人は古事記にも登場する鯨を食べなくなったのか? 
   ※日本の捕鯨にクレームを付けている国の自給率は?
 → 日本の給食はどう変化したのか?


③どんな国の食糧自給率が低い?
 ・やせた土壌,寒冷地,山岳地帯が多い? 

  → 日本は肥沃な土壌,豊かな漁場に恵まれている!
 ・旧植民地でプランテーション作物を多く生産している国?

  → 自分たちではなく、外国人のための食糧を作っている?
 ・ そもそも食糧自給率が100%を超えている国の食料はどこへ??
 ・ GDPにおける国際的な地位低下も踏まえると・・・
  →食料調達において「買い負ける」? 

  ⇒やっぱりカロリーベースが大切?

 

2 日本の科学技術力について(出典:JST「Top10パーセント補正論文数」の「2007~09年」「2017~19年」の上位10位 NISTEP提供)

科学技術力を示す指標の1つとして,科学誌に掲載された自然科学の論文数があります。※「Top10%補正論文」とは他の論文に多く引用される「注目度の高い論文」のことです。

① 10年後の日本に予想されること(論文数はどうなるか?その結果どうなるのか?)

② ①で読み取れたことの原因

※前回の時間軸、時間軸、立場軸という視点に「マクロ視点」を付け加えて、仮説を立てながら考える。

 

≪生徒の問いの展開例≫

①10年後の日本は…

 →もっと論文数が減る?

 →科学技術力が益々下がる?

 →外国で「開発」された製品を「生産」するだけの「下請け」国家になる?

 →労働力が安く買われる?

 →賃金が益々安くなる?

②なぜ論文数が下がっているのか?

 ・日本人の学力が相対的に下がっている? 

  → 「本当に」下がっている? その理由は?
 ・海外に技術を盗まれている? 

  → 本当に盗まれている? なぜ産業スパイを取り締まれない?
 ・研究費にお金を回さない?(投資をしない?) 

  → なぜ投資ができない? → GDPと関係している?

  → そもそもなぜ経済成長が止まった?

≪生徒の振り返り抜粋≫

・日本の現状がよく分かった。万が一何かあった場合、日本の技術力では少し心配になった。前回の空間軸、時間軸に加え、マクロな視点を持つことが大切だと分かった。自分が住んでいる国なのだから、自分のことのようにしっかりと考えていくべきだと思った。他のデータや参考となる書籍を見てみようと思う。

・問題に直接的に関係のある資料や事実だけでなく、マクロな視点を持って考えてみることが大事。問題に対していろいろな視点から考えることを意識し、友達からも新たな視点を見出すように考えることができた。

・日本の食糧自給率が今は低くなっているが、昔はどうかと過去を遡ってみると、ある時期に大幅に下がっていることが分かった。そこからその時期に何があったのかと調べていくと、答えにたどり着くという調べ方が分かった。一つの情報に左右されずに、いくつもの情報を調べることが大切だと考えた。

・空間軸や時間軸、立場軸に着目して考える。調べたことをただ書き写すだけでなく、なぜそうなるのか?などの疑問を持つことが大切だと思った。調べたデータが本当にあっているのかを自分で確認する。自分が今何を調べたいのか、何が必要で何を知りたいのかを明確にする。

・日本の問題について、原因や対策に着目して班で話し合いながら結論をまとめることができた。ただ考えを並べるよりも、疑問とそれに対する答えを繰り返すことで、研究したいこと、調べたいことを明確にすることができると分かった。

・資料を見るだけではわからない側面がたくさんあるから、「なぜそうなっているのか」と疑問を持って課題を見つけたり、解決策を考えたりすることが大切なのではないかと思った。日本にはまだ知らないたくさんの課題があり、解決の目途が立っていないものが多くあることを知った。幅広い視野で日本の現状について情報を得るのが大切だと思った。

 

1年生 探究基礎講座開始

5月2日より、1年生の総合的な探究の時間(思惟の時間)で実施する、「探究基礎講座」が始まりました。

この講座は、「情報分析力」を身につけることと,探究活動を行うための「最低限の知識」を身につけることを目的に、今年度より独自の開発教材を使用したプログラムになります

※「探究基礎講座」の概要は以下のリンクで解説しています。

https://takajo-hs.gsn.ed.jp/blogs/blog_entries/view/485/9d1896d19bd9fa53b3296c669b2c4acf?frame_id=885

 

授業は、生徒個人が考えたり・調べたりしたことを、班で共有しながら視点をひろげる活動を軸に展開されました。

当日に扱ったテーマは以下のようになります。

1 過去30年の海面水位の変化のデータを見て、冷静に考えるために必要なことを考える。

  ※時間軸という視点

  ≪生徒の問いの展開例≫

  →このままでは、どんどん海面上昇して水没する?

  →もうちょっと長い期間で見てみると?

  →上がったり下がったりしている?

  →ということは、今後は下がるかもしれない?

  →「水没する!」とか騒がれている国の面積は増えている?

  ⇒「過去○○年」、「このままでは」という言葉には要注意

 

2 過去30年間の日本のGDP推移を見て、日本の経済状況をもっと的確に把握するために必要な情報を考える。

  ※時間軸+空間軸という視点

  ≪生徒の問いの展開例≫  

  →もうちょっと長い期間で見てみると?

  ⇒過去50年で見れば、経済成長が止まった「瞬間」が分かる。

 

  →他国はどうなっている?(空間軸)

  →順調に伸びている!  

  ⇒「他国」と比較することで、日本「だけ」止まっていることが分かる。

  ⇒日本「だけ」止まった結果「何が」起きているのか、「なぜ」止まったのかと考えることができる。

 

3 合計特殊出生率と有配偶出生率のデータを見て、少子化の原因を考えるために必要な情報を探す。

  ※「仮説」を立てながら情報を集める。

  ≪生徒の問いの展開例≫

  ○ 出生率は下がっているが,結婚している人の出生率は下がっていない。(客観的な事実)
   ⇒ 結婚できる人が減っている?(仮説) 
   → 有配偶率を調べよう! 
   → 確かに下がっていた!
  ○ 有配偶率は低下している。(客観的な事実)
   ⇒ 有配偶率低下の原因はお金?(仮説) 
   → 年収別有配偶率を調べよう! 
   → お金が無いと結婚できなかった!!
  ○ お金が無いと結婚できない。(客観的な事実)
   ⇒ 何でお金が無くなったの?(新たな問い)

4 現代社会において,様々な弊害が取り上げられる二酸化炭素や温暖化について,どんな恩恵があるのかを考える。※立場軸という視点 悪者と「決めつける」とよい部分が見えなくなる。

  ≪生徒の問いの展開例≫  

  →光合成が活発に? ⇒ビニールハウスは二酸化炭素を利用している!

  →光熱費が安い?  ⇒光熱費は冬が一番高く、夏が一番安い!

  →体に優しい?   ⇒死者は冬に圧倒的に多い!

 

5 プラトンの「洞窟の比喩」の話を読み、本日の活動を振り返る。

 

≪生徒の振り返り抜粋≫

・物事を多角的に見ること、自分のいつもとは異なる視点で物事を考えたり、見たり、調べたりすることで、新たな真実や本当の真実が浮かび上がってくると感じた。日頃、私がよく耳にするニュースも本当に正しいのか?本当は違う視点で見られるのではないか?などと考えたり、自分が探究している内容は、全ての人にとってよいものとなるのか?デメリットを発生させることはないのか?とよく考えて調べてみることも大切なのではないかと思いました。これからの探究は、今日学んだことを利用して様々な情報を取得できるようにしていきたいと思います。

・問いについて先入観で物事を決めつけずにグラフや様々なデータを使って事実に近づけることが大事だと思った。今の経済状況、環境問題以外に身近なことをもっと調べてみたい。また、今の時代では当たり前だと思っていることが昔の人にとって当たり前だではないということが多いので、どのようにして今の時代が作られたのかを色々な分野に分けて詳しく調べたい。デメリットが多く思いつくことでもデメリットばかり考えるのではなく、メリットについて考えながら調べたい。

・1つの議題からたくさんの考えが出てきて、どんどん広がっていく感じで面白かった。また、自分の考えとは全然違う考えを友達から沢山聞くことが色々な考え方や物の見方を学んだ。特に出生率についての話し合いが印象的で、お金が関係していると考えたら、そこから沢山の「なぜ?」が出てきてもっと調べて原因を知りたいと思った。

・社会で起こる問題について考えたとき、それを防ぐにはどうしたら良いのか、だけじゃなくて、原因があってこその対策の仕方があると分かったから、もっと深く考えたい。そのために色々な視点から考えたり、仮説を立てて考えると言うことを大切にしたい。二酸化炭素の恩恵に関しては、「二酸化炭素は良くない!」とばかり考えていたけど、恩恵という視点が新しいと思ったので、もっと詳しく調べたいと思った。

・私は普段何気ないデータや情報をみて変化してるなとか一定だなとかを読み取るだけで終わってしまいます。しかし、探究の授業を通してそれで終わってはいけないと分かりました。そのグラフに至る原因というのが必ずあって、それは一目では見抜くことができないと感じました。今回の議題の中では地球温暖化について調べるのが印象的でした。私の中で地球温暖化(二酸化炭素排出)は悪いことだという決めつけがあったので、良いところも多くあることを知り驚きました。視点の転換が大事!

 

1年生 探究オリエンテーション実施

本日、1年生の総合的な探究の時間のオリエンテーションが行われました。

探究部長や3年生の先輩からの話を聞き、来週から始まる探究活動のイメージをつかめたのではないでしょうか。

来週からは、探究基礎講座が始まります。

1年生の皆さん、楽しく探究していきましょう。

下に、当日の様子や探究部長の資料を抜粋したものを載せておきます。

なお、先輩の探究活動については、「探究活動事例紹介」で紹介しています。

 

探究活動事例紹介

3年生の生徒の探究活動の事例を紹介します。

今回は、教育に関わる探究活動をした生徒に話を聞きました。

◯探究活動について
小学校教員を目指していたため教育についての探究活動がしたいと思い、「自己肯定感」に着目して活動を始めました。体験活動や異年齢交流の経験、子どもたちが安心して過ごせる居場所づくりの大切さを学び、自分たちにできることは何かと考えた結果、「高女教室」という小学生を対象にした交流会を企画し実際に開催しました。

◯高女教室について
楽しみながら勉強できる環境を作るため、高校生のサポートで参加者が勉強をする勉強タイムを設けました。また、レクリエーションタイムや自由に遊ぶことができるフリータイムを設けたことで、異年齢交流を活発に行うことができました。参加した小学生やその保護者、ボランティアで参加してくれた高女生の満足度は高く、こうした交流の場・経験の機会をつくること自体に価値と需要があることがわかりました。

◯活動から学んだこと
イベントの企画・運営が想像以上に大変だった一方、多くの参加者に楽しんでもらえたことが事後アンケートからわかり、本当に開催して良かったと感じました。また、実際に自分でやってみることに意味があるのだと思いました。

以下の写真は3月に実施したイベントのものです。詳細は、添付したPDFファイルをご参照ください。

事前打ち合わせいよいよ開始楽しくお勉強お勉強の合間にレクリエーション

高女教室(HP掲載用).pdf

3年生からの2年生へのアドバイス

4月17日(水)の授業では、3年生から2年生へのアドバイスが実施されました。

3年生と2年生がペアを組み、マンツーマンのアドバイスを3回実施しました。

外部の専門家との繋がり方、社会実装するためのコツ等、実際に体験した先輩からのアドバイスは大変参考になったようです。

今後の2年生の活躍を期待しています。

3年生の皆さん、ありがとうございました。