探究通信

1年生 探究基礎講座第5回報告

6月12日(水)の1年生の総合的な探究の時間の様子をお伝えします。

 今回の目的は「教育の目的と問題点を把握し,その原因と対策を探る」きっかけをつかむことです。教育の目的は,「人格の完成を目指し,平和で民主的な国家及び社会の形成者たる国民を育成する」ことと言えます。そこで,日本の若者の社会参画意識,自己肯定感について取り上げて考えていきました。

 

図1     

出典:日本財団「18歳意識調査」第46回 テーマ:「国や社会に対する意識」(6カ国調査) 2022年

 

1 図から読み取れることをまとめ,社会参画意識が低いとどんな問題が起きるのかを考えたり調べてみる。

≪生徒の問いの展開例≫

○  図から読み取れること

・「自分の行動で国や社会を変えられる」,「政治や選挙,社会問題について,家族や友人と議論することがある」といった社会参画意識が極端に低い。

○   社会参画意識が低いと…

・個人や企業が私利私欲に走ってしまう?

 → 巡り巡って国力が落ち,個人の生活水準が下がり,安全保障が脅かされる?

・政治家が私利私欲に走ってしまう?国民の方を向かなくなる?

 → 目先のお金,選挙,利権等…

 → 国民はますます政治に嫌悪感を持ち,政治から遠ざかってしまうという悪循環・・・

 → 巡り巡って国力が落ち,個人の生活水準が下がり,安全保障が脅かされる?

○   教育の失敗?

「平和で民主的な国家及び社会(=よい世の中)の形成者」を育成できていない?

 

2 社会参画意識が低い原因を考えてみる。

≪生徒の問いの展開例≫

○   過去はどうだった?(時間軸)

・投票率は? → 戦後は段々と下がっている? → 戦後に何があった?

○   政治が腐敗しているから低い?

・他国は腐敗していない?

○   なぜ,家族や友人と政治について議論しない?

・興味が無いから? 

 → なぜ興味が無い?

 → 代わりにどんな話をしている? 

 → なぜその話題を選んでいる?

 → なぜその話題が流行っている? 

 → いつどこで誰がどんな意図でどのように流行らせている? 

 → どうすれば,家族や友人と政治についての議論ができるのか?

○   学校で学ばないから?

・なぜ学校で社会参画意識を育てる教育が効果的に行われていない?

 → どんな教育が実施されれば,社会参画意識が育つのだろうか?

 

 図2「自分自身に満足している」についての回答

 出典:令和元年版「子ども・若者白書」調査対象:13歳~29歳の青少年

 

3 図から読み取れることをまとめ,自己肯定感についてもっと詳しく調べるために必要なことを考えて調べてみる。

≪生徒の問いの展開例≫

○   過去はどうだった?(時間軸)

 → 最近のデータはあるが,一昔前のデータは無い?

 → 自己肯定感の低い国民の国が,欧米列強に対して自主独立を保てた?

○   国民性の問題?

 → データを調べるのは難しそう?

○   教育の問題?

 → 教育に問題があるなら,年齢(学年)が上がるほど下がる? → 下がっていた!

小学校低学年は授業中にみんな手を挙げて発言するけど,中学では挙がらなくなる?

 → 学校教育,家庭教育にはどんな問題があるのだろうか?

○   お金の問題?(マクロ経済も踏まえた視点)

 → 家庭教育にどんな影響を与える? → 子どもの貧困率はどのように推移している?

 

≪本日の振り返り≫感想,本日のテーマについてしっかりと考えていくために必要なこと

・日本人の社会参画意識の低さが、日本の政治や経済にどのような影響をもたらしているのかや、なぜ社会参画意識が低下したのかを、歴史的背景、国民性、生活やメディアの変化など、様々な観点から考えることが必要だと思いました。自己肯定感については、日本とヨーロッパなどの違いから、日本の特徴が見えてくるのではないかと思いました。

・自己肯定感や社会参画意識が低い日本人が、欧米列強に対して、自主独立を保てたとは思えない。戦後の占領政策でどのようなことが行われたのかを、もっと調べていきたいと思いました。

・社会参画意識の低さと自己肯定感の低さは紙一重だと思った。また、学校や家庭内での教育の質の低さも関係していると思った。家庭内での教育の質が低くなる原因は、平均収入の低下にも関係していると予想したので、日本の課題は全て繋がっていると改めて感じた。何か一つでも改善すれば、他の課題も一緒に良くなっていく気がした。

・最近の政治状況から日本人は今後社会が良くなると思う人は少ないのに、社会参画意識が低く、社会を変えようとしていないところが日本の大きな問題であると知れた。いい社会をつくるためには、日本の現状を知り、社会を変えようという意識が大事だと思いました。また、日本人の自己肯定感が低いのは、教育方法にも原因があり、今後、自己肯定感を高めるための教育を考えていく必要があるとも思いました。

・日本の社会参画意識、自己肯定感のデータから、教育について考えることができました。テーマに「教育編」と書いてあっても、教育にとらわれず、お金の面や、日本を統制する人の考えなど広く考えるべきなのだと感じました。1つのテーマに絞らず、より多方面から問題を見る力を、実際に自分の探究が始まる前につけておきたいです。

・今回のテーマが「教育」と聞いたとき、学校に関する問題が頭に浮かんだが、子供の自己肯定感や政治への興味を掘り下げていくと、様々な問題に繋がっていて、改めて世の中の問題の繋がりを考えるきっかけになりました。

・普段何気なく感じていたことを掘り返してみると、歴史的事実や政治的問題などが関わっていることがわかった。気づきで終わりにせず、それが起こった原因などその裏にあることを調べて、自分は流されていないか、本質を見抜くようにしていきたいと思った。

1年生 探究基礎講座第4回報告

6月7日(金)の1年生の総合的な探究の時間の様子をお伝えします。

(「探究基礎講座」の概要はこちら)

 

今回の目的は「気候変動問題について定量的に考える」きっかけをつかむことです。

テーマは以下のようになります。

 

1 「実際に」どれほど温暖化しているのかを読み取る。

出典:気象庁データより作成

※「15地点平均」は都市化の影響が比較的小さいとみられる地点の平均

 

※世界の年平均気温を求める際に用いられる地点は都市化の影響や地域的な偏りは考慮していない。

出典:気象庁ホームページ

 

≪生徒の問いの展開例≫

○    図・表から読み取れること

・世界の都市の平均気温は100年で0.7℃上昇している。

・都市化率が高いところほど,平均気温が上昇している。

・冬のほうが平均気温が上昇している。

・最低気温のほうが,最高気温よりも上昇している。

冬の最低気温は大きく上昇しているが,夏の最高気温はあまり変化していない。

 → 暑い日はあまり増えていないが,めちゃめちゃ寒い日がなくなっている!

 

○    もっと詳しく調べるために

・過去1000年,1万年,1億年規模で見てみるとどうだろう?

 → たった100年レベルで見ていくのは無理がありそう? 

・二酸化炭素濃度の推移と合わせて見てみるとどうだろう?

  → 二酸化炭素濃度の上昇と気温の上昇は関連があると簡単には言い切れない?

 

2 二酸化炭素削減の名目でどんなことが行われているのか,そのコストはどれくらいなのか,身近なことから考えたり調べたりしてまとめる。

 

再エネ発電賦課金の推移 2022年度4.2兆 2023年度4.7兆(予想) 

出典:資源エネルギー庁

 

≪生徒の問いの展開例≫

○    身近なことは?

・レジ袋有料化,メガソーラー,電気自動車,水素燃料,風力発電,原子力発電…

○    メガソーラーを例にとれば…

コストは? 環境負荷は? 原料は? 生産国は? 生産者は? 出資者は? 法律は?

○    結局色々やっているが、「何兆円」かかり,どれだけの「手間」をかけているの?

 

3 1,2までの内容、日本の経済状況を総合的に踏まえて,日本の温暖化対策の是非について考えをまとめる。

出典:財務省      

出典:国土交通省資料より作成

 

出典:IEA

 

≪生徒の問いの展開例≫

○ 公共事業程度の5兆円を使用すれば、1年あたりの気温上昇を何℃抑えられるのか?

 →10万~100万分の1℃? 


○    海外は削減しようとしている?

・最大排出国の中国は? 石油メジャーは? 産油国は?

 

○    二酸化炭素が増えたり,温暖化の影響についての素朴な疑問…

・豪雨被害が増えたり,台風が強くなっている? 

 → 本当に? どの程度? 温暖化と関係があると言い切れる? 

 → そうだとしたら,日本は治水予算を増やすべきでは?

・砂漠化が進行する? 

 → 砂漠化するところもあれば緑地化するところもある?

・海水面が上昇して水没する国が出る? 

 → 実際はどうなっている? 水没どころか面積増大? →弱者を利用したプロパガンダ?

・シロクマちゃんがかわいそう? 

 → 増えてた! シロクマプロパガンダ?

 

・そもそも温暖化で滅びるほどの二酸化炭素を排出できる?そんなに石油は産出できる?

 → あと○○年で石油はなくなるとか言っていた人やテレビ局はどうしてるの?

・食料増産に繋がる? 

 → 二酸化炭素が増えて,気温が上がれば作物は育つ?

 ※植物が進化した時の4億年~1億6000万年前は CO2濃度は今の5~10倍!?

 

○    日本の経済状況は?

・GDP世界シェアは20%から5%に!

・一人当たりのGDPは,G7(主要7か国)首位から最下位に!

・手取り収入が550万⇒417万! しかも,消費税3%⇒10%! 物価・光熱費も高騰! 

・そもそも十分な道路整備や,災害対策にもお金が使えていない!

 →もし仮に二酸化炭素削減が有効だとしても、まずは、日本経済を立て直してから、 二酸化炭素削減に取り組むべきでは?

 

≪本日の振り返り≫感想,本日のテーマについてしっかりと考えていくために必要なこと

・今までメガソーラーはメリットが大きいものだと思っていたけど,自分が知らないデメリットも大きくて驚いた。丸谷さんの話でもあったように,自分が肯定したいと思ったものでも,それについてよく知り,デメリットの面も見ることが必要だと感じた。

・地球温暖化は悪影響を及ぼしていると良く聞くが,本当はあまりないかもしれないということが衝撃だった。様々な統計を見てみることが大切だと思った。問題の解決には,どうしても利権が絡んでくるから,定量的に情報を読み取ることが大切で,そのときに簡略化していくと分かりやすくなるということが分かった。自分の身の回りにも,環境対策があったので,興味関心を抱くと,もっと深く知ることができるので,これからはもっと色々なことに興味・関心を抱いていきたい。

・今日の授業を通して,自分が情報調べとグラフの分析が苦手だな,と感じました。これから自分の情報処理能力を上げられるように,日々様々なグラフに向き合ってみたいと思います。また,最初に全体の見通しを立ててから情報を探すことで,見つけるべき資料の量や質を決めてから調べたりするなど,工夫をしていきたいです。

・物事は様々なものと繋がっているため,一見関係がなさそうだとしても突き詰めていくと,案外影響し合っているということも少なくない。物事を考えるときには,広い視野を持つことが必要だ。メリット,デメリットだけでなく,そうすることで誰が得をするのか,裏で何が行われているのか,などを調べると良い。

・今日は,気候変動問題について,定量的な視点を中心に,様々な視点から考えることができました。定量的に考えるときの計算方法なども学ぶことが出来たので,これからの探究活動に活かしていきたいです。また,二酸化炭素排出を減らすために,多くのコストがかかってしまうと,経済発展にも悪影響を及ぼしてしまい,技術が衰え,逆に悪い方向にも行ってしまうのではないかと思いました。そのために,日本はどうするべきなのか,自分にできるのは何かを考えたいと思いました。

・私が今まで聞いてきた,思ってきたことは本当にあっていることなのか,不安に思った回だった。実際に自分で調べて,定量化をもとにした情報や,様々な見方から考えた情報を知らなければいけないと思った。今まで漠然と誰かに教えてもらった知識で生活してきたけれど,世の中には色々な事実?情報があって,これからは自分で情報をあさるべきだと思った。

 

7月29日(月)探究サミットIN高女 開催決定! 参加者募集!

意欲のある他校の生徒と交流をして,探究活動のヒントを得たり,フィールドを広げませんか?

 

探究活動に真剣に取り組めば取り組むほど,自分の学校や地域だけでは必要な情報やデータ,ノウハウ,人脈を得ることが難しかったりするという声をよく聞きます。そこで,探究活動に意欲のある生徒同士の「人脈」を作り,現在取り組んでいる探究活動をより充実させることをねらいとして、高校生どうしが交流できる機会を設けました。生徒のみの参加も可能です。

 

次のような人におすすめです。

1 探究活動の気合いを入れたい!仲間を見つけたい!

探究活動に意欲的に取り組んでいる他校の生徒との交流から刺激を受け,探究意欲を高められます。貴重な協力者を見つけたりすることもできるでしょう。

2 探究活動のヒントを得たい!

探究活動の困りごとや悩みを共有したり,他校の実施状況を知ったり,他校の生徒からアドバイスをもらったりして,今後の探究活動のヒントを得られます。

3 探究活動のフィールドを広げたい!

他校の生徒と繋がりを作ることで,探究活動のフィールドをさらに広げられます。

※上記のような項目に少しでも該当するような生徒の皆さんのご参加をお待ちしております。

 

以下にチラシの画像を載せておきます。(PDF版⇒高校生探究サミットin高女チラシ.pdf

 

申し込みはこちら 7月17日(水)締め切り https://docs.google.com/forms/d/e/1FAIpQLScmj6dQd6eH1Rnzcc6Dtn0bTauzMBC9ppB_SNp4fcxFfAQdoA/viewform

1年生発展探究始動

 6月5日(水)より,1年生の希望者向けの「発展探究」が始まりました。「発展探究」とは,水曜の6限に実施している総合的な探究の時間(思惟の時間)の続きとして7限に開講された授業です。6月中は,6限は「発展探究」の受講の有無に関わらず1年生全員が同じプログラムを行い,7限に「発展探究」独自のプログラムを行います。7月からは「発展探究」の受講者は,6限,7限と一貫して独自の発展的なプログラムを実施します。

 「発展探究」を受講していない生徒のプログラムとの大きな違いは,異学年(2年生,3年生,卒業生)の交流の機会が多いこと,探究基礎講座の発展的な内容を扱うこと,探究活動をブラッシュアップさせるための相互フィードバックの機会が多いことなどがあります。

 この日は、今後のスケジュール説明,質疑応答に続いて,心理的安全性を高める人間関係作りワークを行いました。興味関心を突き詰め,社会問題について主体的に考え,多角的に分析し,行動していく中で,豊かな社会,国家を築き上げる「本物の」リーダーになりましょう!

 

Aタイムを利用した探究活動打ち合わせ

6月5日(水)の3限は,Aタイム(生徒がそのときに必要な学びを主体的に選びとる時間)でした。今回はAタイムを使い,探究活動の打ち合わせをしていた場面を紹介します。

 

 以前の記事で,3年生の生徒の事例紹介として「高女教室」というものを取り上げましたが,本日はその運営打ち合わせを行っていました。高女教室とは,子供たちの自己肯定感(ありのままの自分を受け入れ,前向きな気持ちで物事に取り組める気持ち)を高めるために,異年齢集団による体験学習プロジェクトとして立ち上げたものです。第1回は少人数で実施し大好評でしたが(詳細は⇒こちら),第2回は規模を拡大して8月に実施予定です。しかし,3年生1人だけでの運営を続けると,規模の拡大には限界があり,また有意義なプロジェクトを立ち上げたとしても,卒業と同時に立ち消えてしまいます。そこで,後輩に運営スタッフとしての参加を呼び掛けたところ,1,2年生の有志が集まりました。

 3年生にとっては運営メンバーを集めることで,プロジェクトの規模の拡大,持続性の向上に繋がりますし,後輩にとっては先輩の理念やノウハウを引き継げるメリットがあります。また,「教育」に携わる探究活動をする生徒にとっては、自身の教育プログラムを試したりするなど,多くの可能性を秘めた「場」とも言えます。

 このように,先輩が立ち上げたプロジェクトを後輩たちが引き継ぎながら,その理念やノウハウを継承し,自分自身の探究活動をより発展させていって欲しいと思います。