図書館報(椎の木かげ)

 先入観を捨て、一歩を踏み出そう。

高崎女子高等学校長 丸橋  覚

 「オギャー、オッギャー。はいは~い、今行くね~」、「我社の経営方針を発表します」、「ご飯だよ~」、「私の夢はパイロットです」、「支払い、カードで」、「ピンクのがいい」、「サッカーしようよ~」、「子供が熱を出したので、有給取らせてください」・・・。

 聞こえてきたのは男性の声ですか?女性の声ですか?

 ACJapanのテレビCMです。このCM自体に賛否両論があるようですが、私たちは知らず知らずのうちに先入観や固定観念、偏見を持って生活していることを気付かせてくれます。

 最近では、男女共同参画社会が進み、男性も女性も働きに出るのが当たり前になってきており、電車やバスの運転手やタクシードライバー、会社の社長や議員にも女性が増えてきていることを実感することができます。一方で、社会が大きく変化している中においても、依然として昔ながらの仕組みなどが残っていることもあり、皆さんのような若者でも、知らず知らずのうちに先入観や固定観念、偏見が身に付いてしまっていることもあるのではないでしょうか。

 昨年12月に、新しいこれからの「第四期群馬県教育ビジョン」の原案が公表されました。(群馬県Webページで確認できます。)

 県教育ビジョンの冒頭に、群馬県のこれらかの教育の最上位目標が示されています。ここでは、「自分とみんなのウエルビーイングが重なり合い、高め合う共生社会へ向けて、一人ひとりがエージェンシーを発揮し、自ら学びをつくり、行動し続ける『自律した学習者』を育てること」としています。高女が進めようとしている高女SAH(Student Agency High School)が目指す方向とほぼ重なっています。

 また、教育ビジョン計画策定に向けた想い(教育ビジョンP.4)の中で、次のようなフレーズがあります。

 「ニュースやSNSの中で、「社会が悪い」、「社会のせいだ」という主張を目にしたことはありませんか?「社会が悪いのだから仕方がない」、「社会なんて変えられない」そんなふうに感じてはいませんか?けれど、「社会」というものは、「自分以外の誰か」のことではありません。誰かが勝手に決めているから、自分ではどうしようもない――そのように思うことはありません。何故なら、立派なメンバーの一人である皆さんは、「社会」を変える力を持っているからです。一人きりで今すぐに社会を変える、というふうには、いかないかもしれません。それでも、周りの人と話し合い、協力し、より良い解決策を探しながら行動していくことで、「変化」を生み出すことは可能です。人は、誰しも、生まれついて、自分と社会をより良くしようと願う心や、そのために必要な力を持っています。こうした「自分とみんなのために動きたい」、「そのために自分の意志で学びたい」という皆さんの気持ちを健やかに育むのも、損ねるのも、皆さん自身の考え方や周りの大人の関わり方次第です。群馬県教育ビジョンでは、生徒の皆さんを「教えられ、守られるだけの子ども」とは考えません。皆さんそれぞれの年齢や状況に応じて、自分の頭で考え、判断し、行動できるようになるための力を身に付けてほしいと願っています。」と。

 私も同感です。一人ひとりの力は小さくとも、一人ひとりが自分なりの努力をすることで、社会の大きな流れをつくることができると考えます。

 皆さんは、今は高女生の一人でありますが、先輩方がそうであったように、10年後、20年後は誰もが社会の創り手として活躍してくれていることと思っています。

 高女グラデュエーションポリシー(GP)の第2に、「【創造】高女から社会を変える!」があります。10年後、20年後の自分の姿を想像しながら、自分の活かし方を探り、よりよい社会を創る人材として大きく成長してほしいと願っています。

 知らず知らずのうちに身に付いてしまっている先入観があることを意識し、先入観にとらわれず、勇気を持って一歩を踏み出してください。

 高女生の主体性に期待します。