令和5年度 卒業証書授与式 式辞

 柔らかな日差しが降り注ぎ、木々のつぼみの膨らみが春の訪れを感じさせる今日の佳き日に、同窓会長 赤羽洋子 様、教育振興会長 堀口芳明 様、PTA会長 鈴木智信 様をはじめ、保護者の皆様、同窓会の皆様のご臨席を賜り、ここに第七十六回 群馬県立高崎女子高等学校 卒業証書授与式を盛大に挙行できますことを、教職員を代表いたしまして厚く御礼を申し上げます。

 ただ今、本校の所定の課程を修了し、卒業証書を手にした二百七十二名の卒業生の皆さん、卒業おめでとうございます。また、お子様の後ろ姿を温かい眼差しで見守っておられる保護者の皆様方のお喜びと感慨はひとしおのことと拝察いたします。心からお祝い申し上げます。

 3年前、皆さんは期待に胸を膨らませ、本校に入学してきました。すでに急拡大していた新型コロナウイルス感染症の影響で、授業や部活動も思うように取り組めず、多くの学校行事も延期や規模の縮小などコロナに翻弄された高校生活となりました。3年生になってようやく部活動や学校行事が少しずつ通常開催されるようになりました。

 高校総体では、山岳部が5大会連続の優勝をはじめ多くの運動部が上位入賞を果たし、総合成績でも5年ぶりの女子総合第2位を獲得しました。また、山岳部、陸上競技部、なぎなた特別愛好会が北海道インターハイに出場し、関東大会にも多くの運動部が出場するなど高い成績を収めました。文化部でも、マンドリン部、放送部が全国大会に出場し、書道部、百人一首部、囲碁特別愛好会が全国総文かごしま大会に県代表として出場するなど、数多くの文化部が関東大会、全国大会で活躍する高い成績を収めました。

 学校行事では、6月には4年ぶりの公開開催となった椎樹祭で高女生の個性豊かな展示や発表が繰り広げられました。7月の球技大会、8月の学校説明会、9月のスポーツの日などでは、一人ひとりの個性を発揮した高女生の底力を実感することができました。中でも、学校説明会は、昨年度からすべて生徒実行委員だけで企画・運営を手作りで作り上げ、我々教職員では想像することができない高女生ならではの視点や発想力を発揮して、高女の魅力を中学生に伝えてくれました。高女生ならできる。もっと生徒に任せて、我々教職員では思いもつかないような高女生に秘めた力を発揮して欲しいと強く思うようになったのです。これが、高女生の主体性に期待する私の原点でもあります。

 県教育委員会が新しく策定している「群馬県教育ビジョン」計画策定に向けた想いの中で、次のような文章があります。

 「ニュースやSNSの中で、「社会が悪い」、「社会のせいだ」という主張を目にしたことはありませんか?「社会が悪いのだから仕方がない」、「社会なんて変えられない」そんなふうに感じてはいませんか?けれど、「社会」というものは、「自分以外の誰か」のことではありません。誰かが勝手に決めているから、自分ではどうしようもない――そのように思うことはありません。何故なら、立派なメンバーの一人である皆さんは、「社会」を変える力を持っているからです。一人きりで今すぐに社会を変える、というふうには、いかないかもしれません。それでも、周りの人と話し合い、協力し、より良い解決策を探しながら行動していくことで、「変化」を生み出すことは可能です。皆さんそれぞれの状況に応じて、自分の頭で考え、判断し、行動できる力を身に付けてほしいと願っています。」と。

 私も同感です。一人ひとりの力は小さくとも、自分が社会を変えることができるという意識を持ちながら、一人ひとりが自分なりの努力をすることで、社会の大きな流れをつくることができると考えます。高女で学んだ皆さんならなおさらです。

 高女では、「自ら考え、判断し、行動できる生徒の育成」を目指した高女SAH(Student Agency High School)の取組を始めています。この取組は、AI(人工知能)や情報技術が急速に発展し、複雑で予測困難な現代社会において、高女で学んだ皆さんが、誰かが解決してくれるであろうと受け身の姿勢でとどまることなく、主体的に他者と対話しながら自ら課題を設定し、解決する力を持ち、生涯にわたって新たな社会の創造に寄与していく存在となってほしいという願いが込められています。

 高女の目指すグラデュエーションポリシー(GP)の第二に、「【創造】高女から社会を変える!」があります。多くの先輩方が既に実践してくれているように、皆さん誰もが社会の創り手として主体的に社会をより良くしていこうと考えて行動を起こし、10年後、20年後は、皆さんが日本の各地で、そして世界で活躍してくれていることを願っています。

 別れの時が近付いてきました。

 本日、卒業するに当たり、これまで、皆さんを育ててくださったご両親をはじめご家族の方々や、皆さんを支えてくれたたくさんの方々のお力添えがあったことを改めて心に刻み、感謝の気持ちを持ってこの学び舎を後にして欲しいと思います。

 さらに、皆さんは、輝かしい伝統と歴史を有し、多くの先輩方が社会の様々な分野で活躍している高崎女子高校の卒業生であることに誇りを持ち、これからも、胸を張り、力一杯、自らの人生を切り拓いていってください。

 私たち教職員一同、皆さん一人ひとりのこれからのご活躍を応援しています。

 結びに、この学び舎を巣立ちゆく卒業生の皆さんの前途に幸多からんことを心から祈念して式辞といたします。

 令和六年三月一日

群馬県立高崎女子高等学校長 丸橋  覚