入学式式辞

 暖かい春の日差しに誘われて、満開の桜が新しい門出を祝福してくれているかの如く咲き誇っている今日の佳き日に、同窓会長 赤羽 洋子 様、PTA会長 鈴木 智信(とものぶ)様、教育振興会長 堀口 芳明(よしあき)様、同窓会並びに保護者の皆様のご臨席を賜り、ここに令和六年度 群馬県立 高崎女子高等学校 入学式が挙行できますことは、私ども教職員一同、大きな喜びであり、心より厚く御礼申し上げます。

 ただ今、入学を許可いたしました二百八十一名の新入生の皆さん、入学おめでとうございます。

 本日、歴史と伝統のあるこの高崎女子高校に、新たな一員として加わる皆さんの入学を心から歓迎いたします。

 また、保護者の皆様におかれましても、お子様が健やかに成長され、高女生になられた喜びはひとしおのことと、心からお祝い申し上げます。

 本校は、明治三十二年に、群馬県高等女学校として県下初の女子高等教育機関として設立され、今年で百二十五年の節目を迎える歴史と伝統のある高校です。本校の校訓は「向学叡智」、「清楚品位」、「明朗闊達」であり、新入生の皆さんが「向学叡智」常に真摯に学びに向かい高い知性を保ち、「清楚品位」飾り気がなく清らかで気品に溢れ、「明朗闊達」明るく前向きで広い心を持った、自立した一人の人間として成長できるよう教職員一同心から応援いたします。

 高崎女子高校の百二十五年の歴史と伝統を継承する一方で、新しい教育も始まっています。

 これからの日本の教育の方向性を示す新しい高等学校学習指導要領では、AI(人工知能)などの情報技術の急速な進化やグローバル化が進展する予測困難な現代社会において、予測できない変化に対し、誰かが良くしてくれるであろうと受け身で対処するのではなく、自ら行動を起こし、より良い社会を創ろうと主体的に行動できる社会人の育成を目指しています。

 群馬県教育委員会でも、昨年度から生徒の主体性(Agency)を重視した非認知能力の育成に力を入れており、高崎女子高校は、昨年度、「自ら考え、判断し、行動できる生徒の育成」を目指した高女SAH(Student Agency High School)の指定を受け、この4月から9つの具体的な取組を始めます。詳細は、本校Webページでも紹介していますのでご覧ください。

 高女SAHが目指す力は、「自立」、「創造」、「対話」の3つあります。

 1つ目は「自立」、自ら学び、行動する力であります。

 自分で立ち、自分から一歩を踏み出す。受け身にならず、指示待ち人間にならない。誰かのせいにせず自分で決めて行動できる高女生を育てたい。キーワードは、「「教わる」から「学ぶ」へ」であります。

 具体的には、進路実現を達成するために、自ら学べるように、3年間を見通した進路指導体制を整備し、適切な時期に適切な進路指導を行うことを目指すとともに、授業においては生徒同士の対話を重視した双方向の授業を進めます。また、学習を自分でデザインする時間「Aタイム(Agency Time)」を、年間15時間程度設けます。さらに、今年の新入生から、クラス担任を固定せず2クラスを3人程度のチームで担任を行うチーム担任制を導入します。

 2つ目は「創造」、誰かのためになることを創造する力であります。

 社会は変えられないと不平不満を言うのではなく、高校生でも社会を変える力を持っているという実感を持ちながら、より良い社会のつくり手として行動できる力であります。キーワードは、「高女から社会を変える!」であります。

 具体的には、学校の学びを学校内に閉じず、社会人インタビューやフィールドワークなど、社会との接点を重視した探究活動を進めます。また、高女での探究活動が、そのまま大学入試のアピールポイントとなる総合型選抜入試へつなげる進路指導の充実も図ります。さらに、新入生の希望者には「発展探究」を選ぶことができ、より高度な探究活動に打ち込める環境を整備します。

 そして3つ目は「対話」、多様な人々と対話しグローバルに活躍できる力であります。

 高女生の活動の場所は教室だけでなく、友達や先輩、地域の方々や海外の人々などとの交流を深め、地域や世界で学ぶ環境整備に務めます。キーワードは、「地域から世界、ぜんぶが私のフィールドになる!」であります。

 具体的には、生徒から構成される「高女SAH委員会」の8つの提案を支援し、文化祭の毎年開催や他校との交流、校則・服装の見直しなど、生徒主体の取組をサポートします。また、生徒が主体的に関わる開校記念式典や生徒がつくる修学旅行などの検討も進めます。さらに、希望者を対象としたアメリカ研修やグローバルリーダー養成講座など、国際理解教育を充実させるとともに、英語を話せる高女生、英語を使いこなせる高女生の育成を目指します。

 新入生の皆さんは、「自ら考え、判断し、行動できる人 」を目指し、固定観念にとらわれたり、誰かが良くしてくれるであろうと受け身で対処したりするのではなく、自ら行動を起こし、積極的にチャレンジし、小さな一歩でも社会をより良く変えられる存在であることに気付いて欲しいのです。

 先生方には、生徒と同じ目線で生徒と向き合い、「指導する」から「支援する」という姿勢を心掛けて欲しいとお願いしています。また、生徒を、自ら考え、判断し、行動できる一人の大人として対応して欲しいとお願いしています。保護者の皆様も、どうぞ我が子を自ら考え、判断し、行動できる一人の大人として見守り、我々教職員と共に、自ら考え、判断し、行動できる高女生の育成にご協力いただけると幸いです。

 結びに、新入生の皆さん一人ひとりが高女での充実した高校生活を送り、主体的に行動することで大きくそして飛躍的に成長し、3年後には自らの進路実現が達成できることを祈念して式辞といたします。

 令和六年四月九日

群馬県立高崎女子高等学校長 丸橋  覚